「トライアル雇用」とは、職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を原則3か月間試行(精神障害者は原則6か月、最大12か月)雇用することにより、その適性や能力を見極めて、期間の定めのない雇用への移行のきっかけとしていくことを目的とした制度です。労働者と企業がお互いを理解した上で無期雇用へ移行することができるため、ミスマッチを防ぐことができます。
トライアル雇用は、雇用前の体験実習の一つとなりますが、期間内で企業に入って実際の業務に携わっていきます。
体験実習とは
トライアル雇用をご説明する前に、その大枠となる体験実習についてご説明します。
体験実習とは、実際の職場で仕事を体験することです。
実習期間は3日~2週間、1日の勤務時間は4~6時間がよくあるケースです。
体験実習には、職場体験実習と雇用前実習の2種類があります。
①職場体験実習(訓練として行う実習)
実際の職場で仕事を体験することです。実際の職場で実践的な訓練ができる為、体力や業務の向き不向きなど、多くの気づきを得られるメリットがあります。
➁雇用前実習(選考前に行う実習)
採用を検討している企業が選考前におこなうのが、雇用前実習です。志望している側と企業側とのミスマッチを選考前に確認できるメリットがあります。
体験実習の業務例
事務系
コールセンター、人事業務アシスタント、データ入力、リサーチ業務、庶務的業務など。
パソコンのスキルが必要となる場合があります。
小売業
商品の陳列、補充、バックヤード業務(検品、品出し、倉庫内での袋詰め、倉庫内での商品整理)など。少々体力が必要となる場合がありますが、接客が少ない分、落ち着いて裏方を務める業務になります。
介護関係
洗濯、介護補助、話し相手、調理補助、データ入力などがあります。介護利用者とのコミュニケーションスキルを求められる場合があります。
飲食店
仕込み作業、清掃、店内開店準備、荷受けの業務など。体力を使う仕事が多い場合があります。
製造業
作業場の清掃、製造ラインでの軽作業、庶務的業務(事務作業、タイムカード・残業管理)など。
繰り返し同じ作業を行うルーティン作業力が試されます。
その他
その他に
ガソリンスタンドでの洗車、
図書館での図書整理、
給食室での食器洗い、などがあります。
体験実習で得られること
①業務適性を確認できる。
自分の今のスキルや業務適性を確認することができる。
➁希望職種の選択に役立つ。
職場環境や就業時間などの希望の具体化につながります。
③就職準備ができる。
今の体力や業務適性を確認することで、企業とのミスマッチを防ぎます。
体験実習の実績は、履歴書や面接のアピールにすることができます。
体験実習を行うメリット
・仕事に対して、向き不向きが分かる。
・業務に何のスキルが必要か分かる。
・体力がついていくかが分かる。
・自分が職場環境に適性出来るかが分かる。
・できることを発見し自身になった。
・応募企業の職域を広げられた。
・入社する前に安心できる職場だと確認できた。
体験実習を行うことへの不安点
・本当に自分に合った職業なのか。
・ミスしたりしないだろうか。
・人とのコミュニケーションは取れるのだろうか。
不安の軽減や解消のためにできること
・上司や先輩とコミュニケーションをとる。
・仕事場や内容を広く俯瞰視する。
・不安内容をまとめる。
離職を希望する人は、個人的理由が56.5%あり、具体的には職場の雰囲気・人間関係に起因することが33.8%あります。(厚生労働省職業安定局調べ)
この差を埋めるために、企業への体験実習は効果的なのです。
トライアル雇用とは
ここで改めてトライアル雇用とは、企業と労働者が双方のミスマッチを防ぐための試験雇用制度です。
離職を防ぐことができるなどメリットは体験実習と同様ですが、実際には別なものになります。
職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を原則3か月間試行(精神障害者は原則6か月、最大12か月)雇用することにより、その適性や能力を見極めて、期間の定めのない雇用への移行のきっかけとしていくことを目的とした制度です。
トライアル雇用には企業側にもメリットがあります。
・トライアル雇用終了時に本採用するか決めることができる。
・初めての障害者雇用の場合、安心して雇用に取り組むことができる。
・労働者一人当たりに原則月額4万円の奨励金を受け取ることができる。
トライアル雇用とは別に、公職機関で体験実習のできる「チャレンジ雇用」がありますが、長くなりますので、別ブログにてご説明します。
トライアル雇用のメリット5選
改めて、トライアル雇用のメリットを企業側、労働者側の両側から見て行きたいと思います。
①採用のコストを抑えられる
国は、トライアル雇用を導入した企業対して助成金を支給します。一般的に、企業が採用活動を行う際には説明会の実施や広報活動に対する支出が必要となります。それに対してトライアル雇用では助成金を人件費に充てるなどしてコストを大幅に削減できます。
➁採用のミスマッチを防ぎやすい
トライアル雇用では実際の業務を通して、労働者が仕事に対してどの程度の適性があるのかを判断することが可能となります。書類に目を通すだけだと業務に対する適性があるように思われても、実際の仕事現場に対する適性が低いケースもあります。
逆に、就業経験は無いものの呑み込みが早く即戦力になりやすいケースもあります。一定期間内で適性を判断したのちに採用につなげられるため、ミスマッチを防ぐことが可能です。
③負担なく断りやすい
一般的な採用活動と異なり、企業にはトライアル後の常用雇用の義務はありません。したがってトライアル雇用の期間が満了すれば企業側は自らの意向により契約を比較的容易に解除することが可能となっており、継続雇用を負担なく断りやすいというメリットがあります。
④助成金が支給される
前述の通り、トライアル雇用には国から支給される助成金を人件費などに利用できるというメリットがあります。通常の採用活動・企業活動では企業が直接的に人件費などを支払わなければなりません。
⑤採用まで短時間でできる
通常の採用活動では、人材採用で時間がかかることが多いですが、一方でトライアル雇用では採用までの期間を、公共職業安定所などとの連携を通じて一定期間内まで短縮することが可能です。
公共職業安定所から条件と合致する応募者を紹介されるため、企業側は面接のみを行い、書類選考は必要ないため、採用まで短時間で済ませることができます。
トライアル雇用のデメリット5選
トライアル雇用のメリットを紹介してきましたが、トライアル雇用を検討するためにはデメリットについても同様に見ていきましょう。ここでは、トライアル雇用のデメリットを5つに分けて詳しく説明していきます。
①教育体制の整備が必要
トライアル雇用では就業経験が少ないあるいは休職期間が長い求職者が対象とされています。そのため、トライアル雇用では未経験人材の応募も多く、教育や育成・指導が長期になる可能性があります。その教育体制を整えて対応することが必要です。
➁はじめから指導しなければいけない
通常の中途採用であれば、同種の業界からの転職希望者を採用できることが多いため、求職者に対して入社後にはじめから指導する必要はありません。
それに対して、トライアル雇用の場合は前述のように教育体制の整備が必要です。そのため社員をはじめから指導する必要性が出てきます。
③人材育成に時間がかかる
トライアル雇用は就業経験の少ない方や長期ブランクのある方を対象としている雇用制度です。そのため、通常の中途採用と比べると人材育成に時間と労力が必要となる可能性があります。
職種によっては人材育成にかかる負担が増えてしまい、社員として活躍できるようになるまでに長期間かかる場合もあります。
④助成金の手続きに時間がかかる
助成金を受給する際の手続きの煩雑さは、トライアル雇用の最も大きなデメリットの1つと言えます。トライアル雇用助成金を受給するために、まずは公共職業安定所と調整して採用計画を作ります。
その上で、採用計画に基づいた申請書類を作り、厚生労働省に提出する必要があります。
出典参照:トライアル雇用の実施|厚生労働省pdf
⑤書類処理が発生する
トライアル雇用を行う場合は申請手続き・計画書・終了報告書に至る段階的な事務手続きが必要です。企業は各段階における規定のフォーマット用紙を提出する必要があります。
したがって、トライアル雇用制度で雇用した就業者が多くなると、それだけ人事担当者や採用担当者の作業が増えることになるでしょう。
まとめ
トライアル雇用により、働くうえでの不安の軽減や解消を図ることができます。トライアル雇用で不安な点が見つかれば、周りに相談してみましょう。実際に体験された方の話を聞くことも有効です。
また、デメリットでもありましたが、トライアル雇用の申請の手間を考えると、ひとりでは大変な作業です。ここは障害者転職エージェントや(※)就労移行支援サービスの利用をオススメします。企業と労働者の間に入り労働条件をまとめ、それらを必要文書に落とし込んでもらえます。煩わしい手間をはぶきトライアル雇用に集中できます。積極的に制度を活用しましょう。
※就労移行支援サービスとは、障害のある方の社会参加をサポートする、国の支援制度で障害者総合支援法という法律に基づいた、障害者総合支援法に基づく就労支援サービスのひとつです。
一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)を対象に就職に必要な知識やスキル向上のためのサポート、就労への促しや斡旋、合理的配慮の話し合い、企業への就業定着支援のサービスを行います。
おすすめ【障害者向け転職エージェント】
①dodaチャレンジ
>>障害者の転職
➁アットジーピー【atGP】
>>プロと一緒にする転職活動!障害者の就・転職ならアットジーピー【atGP】
おすすめ【就労移行支援サービス】
①【LITALICOワークス】
>>【LITALICOワークス】
➁就労移行支援事業所 Cocorport(旧社名:Melk)
>>障がい者の就職を支援する就労移行支援事業所 Cocorport(旧社名:Melk)
③パーソルチャレンジ・ミラトレ
>>【パーソルチャレンジ・ミラトレ】働く未来をあきらめない就労移行支援
>>障害者雇用の話